5Gには3つの「利用シナリオ」が想定されている。
中でも、産業用通信で使えるのは「URLLC」というシナリオ。
仕様は素晴らしいが、実装にはハードルも。
1.2019年は5G元年?
次世代の通信とよばれる「5G」。
言葉だけが先走りつつありますが、アメリカや韓国など、各国で運用開始が進められつつある2019年は「5G元年」ともいわれています。
普及当初は、携帯網通信としての利用が中心になりますが、5Gの特徴は産業用(工場)通信や自動運転など、従来の無線とは異なる用途での利用が期待されています。
産業用通信に従事する者として、見逃せない技術をまとめてみました。
2.5Gには「3つのシナリオ」がある
5Gには、その特徴に応じて「3つの利用シナリオ」が総務省より提示されています。
それぞれのシナリオの特徴およびその想定されるスペックを、下記に記します。
いちばん左の超高速(eMBB)は、単位時間あたりに送れる情報量が飛躍的に伸びるというもので、高精細動画の鑑賞や遠隔からの動画を活用したサービスが想定されています。
真ん中の多数接続(mMTC)は単位面積あたりの接続数の増加で、例えばサッカースタジアムの観客への一斉配信などで使用可能です。
いちばん右が、超低遅延+高信頼性の(URLLC=Ultra Reliable Low Latency Communication)です。自動運転だけでなく、当サイト運営チームが注目しているのは、工場での高信頼通信での活用です。
3.仕様は素晴らしいが、実装にはハードルも
URLLCは通信遅延1msecかつ、信頼性(伝送成功確率)99.999%と、工場の通信で忌避される「遅れる、切れる」をカバーする特徴を持っています。
実際に、大手自動車部品メーカーのデンソーと通信会社のKDDIとがタッグを組んで、5G通信を活用した産業用ロボット通信の実証テストを開始している報道も行われています。
ただし、実際に商用化されるには、ハードルがあるのも事実です。
現在の工場の自動化設備はPLCを中心に組まれているものが多く、PLCが5G対応するのか、5Gを活用したPLCレスのシステムが誕生するかは別にして、既存の仕組みの入れ替えが必要です。
このようなハードルを乗り越えて5Gによる産業設備制御が実現するのは、早くて2022年以降~?と推測されています。
4.現実的なのは、上位層からの普及
工場における通信では、現場機器に近い産業用制御ほど伝送成功確率/遅延時間などの信頼性に関する要求が厳しくなります。
5G通信は、現場機器ではなく、まずは比較的信頼性要求が厳しくない上位層(MESなど)から普及していき、機をみて現場機器の一部で使用される…という流れになると考えられます。
その際も、現在のPLCを中心とした仕組みがなくなるのではなく、住み分けが行われるのではないかとされています。